北京大国際関係学院の賈慶国教授は、中国への外国人留学生が急減している一因として2023年7月に施行された改正反スパイ法を挙げ、同法の実施細則を明らかにすべきだとの見解を示した。国家安全当局への批判とも受け取られかねず、異例だ――とされた件。気になって続報を調べたら、日本で報じられているよりもごく普通だった。
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提案全文がネット上に掲載
当初、賈教授の今回の提案は「通信アプリ、微信(ウィーチャット)に投稿」と報じられていたが、この提案は全人代で公式に発表されたもの。そのため、今では中国の複数サイトでこの提案全文が掲載されたページが普通に存在している。
その提案の中で、賈氏によると、10年前のピーク時は約1万5000人だった米国からの留学生が2023年は約350人に激減した。新型コロナウイルス禍に伴う行動制限の撤廃後、西側諸国に留学する中国人は大幅減少していないため、米中対立といった地政学的要因では中国への外国人留学生の急減を説明できないと持論を展開した、という。

反スパイ法改正、全体の3%
その対策として、賈教授は9つの提案を行っているが、反スパイ法の改正については、5点目にしらッと入れているにすぎない。
しかも、報道にある通り、反スパイ法の実施細則をできるだけ早く明らかにし「曖昧さを減らし、合法的な学術研究を保護する」よう求めた、程度の文言。
提案全文は中国語で約1500文字あるが、「反スパイ法の改正」に触れた箇所はわずかに45文字、提案全体のわずか3%に過ぎない。
さすがに「国家安全当局への批判とも受け取られかねず、異例だ」は言い過ぎの感がある。また、さすがに教授なだけあり、全体の提案趣旨は理論的で、「反スパイ法の改正」提案も不自然な感じを受けない。だから中国でも問題にされていない可能性がある。
ただ、こうしたまともな提案は今の中国ですんなり受け入れられるとは考えづらく、問題の解決には至らないと思われる。
9つの具体的な提案
それでは、その9つの提案を具体的に見てみよう。まともなもの、トンデモなもの様々だ。
- 習近平総書記の談話精神をまじめに勉強し、外国の学生による中国留学の意義を推し進め、その認識を高める
- 中国留学している外国の学生の中国での生活の客観報道に勤め、一部の突出した不良行為だけを報じる姿勢を改めること
- 中国留学している外国の学生のインターン制度を整備、非敏感企業にインターンしやすくすること
- 中国留学している外国の学生の論文において、匿名性を用いたり、中国の学生と分けて審査すること
- できるだけ早く関連法律、例えば反スパイ法の実施細則を発表、曖昧さを減らし、合法的な学術研究を保護すること
- 中国留学している外国の学生のスマホやPCから、海外サイトへの接続を可能にするなど、生活環境を整備すること
- 各大学に財政と結びついた奨学金制度を設け、各大学が中国留学を希望する海外の学生を勧誘しやすいようにする
- 国として、海外での中国留学の勧誘を強化する
- 中国留学している外国の学生に関するデータや状況を定期的に発表、研究していくこと
反スパイ法改正以外の提案
1点目に「習近平総書記の談話精神をまじめに勉強」を入れて、全体として保身を図っているのが特徴。
6点目、スペースの関係(面倒?w)で大幅にはしょったが、おそらくX(旧twitter)、インスタ、YouTubeが中国では閲覧できないものを、中国留学している外国の学生だけには開放しよう、という面白い提案。まあ、非現実的だと思うが。
この6点目にはその他に、中国留学している外国の学生に対して、短期留学でも中国の銀行に口座を作れる仕組みを整備すること、スマホ決済が主流になっている中国で、中国留学している外国の学生も不便なく決済できる環境や仕組みを作ること、などを提案している。
コメント
習さんは、海外からの留学生を必要としていない、ように感じられるのだがw
反スパイ法、曖昧のままの方が都合がいいに決まっているw