中国の銀行で幹部報酬支払い延期、支払い済み報酬返却の動きが加速

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中国の銀行で、成果報酬の支払い延期、さらに支払い済み成果報酬の会社への返却という現象が起こっている。表向きは、銀行経営のリスク対策、とされているが、折からの不動産不況で、中国の銀行も経営が厳しくなっており、その補填の可能性もある。不動産問題が金融分野に波及してきた一面、ともとらえられなくはない。

2年間で21億円の報酬返却

この問題、今に始まったことではなく、昨年から。中国の銀行の決算発表で、成果報酬の支払い延期、支払い済み成果報酬の会社への返却のデータが公表され始めており、その都度、中国ではトレンド入りする。

その代表格が、中国民間銀行大手の、招商銀行だ。支払い済み成果報酬の会社への返却の対象者は2023年、4415人となっている。これは前年の4000人割れから比べると、極端に急増している。

支払い済み成果報酬の会社への返却総額は2023年、4329万元(約9億730万円)で、これは前年の5824万元(約12億2066万円)よりは減少している。純益1466億元(約3兆円)を誇る同行にとっては、目くじら立てるほどの金額ではないが、一般的には巨額だ。

支払い延期額は35億円も

同行の従業員は2023年末時点で11.65万人だから、対象者はわずか3.78%を占めるにすぎない。つまり対象者は、高級幹部か、経営リスクと密接に絡み合う重要ポストの人のみとなる。

この2年での支払い済み成果報酬の会社への返却額は1人当たり1万元平均。日本円で21万円にもなるので、個々人に与える影響は小さくない。問題はこれが、招商銀行にとどまらず、他の銀行にも波及している点だ。

天津銀行は2023年になって、初めて成果報酬の支払い延期、支払い済み成果報酬の会社への返却のデータを公表した。それによれば、成果報酬の支払い延期額は1.66億元(約35億円)、支払い済み成果報酬の会社への返却額は174万元(約3645万円)。

35億円の報酬支払い延期額は尋常ではない。今はこうしたデータが続々と中国各行から発表されてきているが、公表していない銀行もあるだろうし、中国の銀行の高級幹部が思いの外苦悩にさらされている可能性がある。

政府が主導した制度設計

なぜこのような制度ができたのか。実はこれ、中国政府が奨励してきた制度だ。言い始めたのは2010年ごろからのようだが、定着してきたのは近年。

高級幹部か、経営リスクと密接に絡み合う重要ポストの人のみを対象とするもので、仮に銀行の経営危機、あるいは違法行為に及んだことが露見した、などの際、支払いを延期してきた成果報酬を確保、あるいは支払い済みの成果報酬でも回収できるメカニズムとしても機能する、という。

もちろん、中国でもこの手法に反対する人もまだ多い。明らかにこうした幹部たちのモチベーションを下げ、経営効率が下がることが懸念されるからだ。しかし現状の方向性だと、この制度が中国の銀行、あるいは保険や証券など金融機関で定着する可能性が高い。

背景に給与未払い文化?

中国の不動産各社が相次いでデフォルトする中で、金融部門への波及は時間の問題、とされる。そのためのリスクヘッジ、とは、規模が違い過ぎて到底なりそうもないが、従業員への報酬を管理するという点では役に立ちそう。

中国では銀行に限らず、また成果報酬に限らず、ホントによく給料未払いが発生するのだが、そんなのが発生すれば倒産しろよ、と思いつつ、給料の支払いが遅延する、というのはある意味では正常、という文化でもあるのだろうか。

翻訳元:https://x.gd/J9HeI

コメント

  1. 犯罪行為があればともかく、一度支払われた報酬の返却を求められ、実際返却するの?w

  2. 後日の基本給などから差し引かれるのかな?w

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